新生讃美歌にも、教団54年版も、讃美歌21にもないのですが、聖公会の讃美歌集には“COVENTRY CAROL”という英語の題のついた讃美歌が入っています。元々イギリスのコヴェントリーという町で15世紀に演じられた劇(題名は“Coventry Pageant of the Shearman and Tailors”)の中で歌われたもので、ヘロデ王の軍隊がベツレヘムにやって来て赤子の大虐殺を行うシーンの直前に、ベツレヘムの女性達がこのCAROLを歌う、というものです。
聖公会の聖歌集の中にはヘロデによる幼児虐殺に関わる賛美歌4曲もあります。それは多分、カトリック教会がこの幼子たちをイエスのための命を落とした最初の殉教者、聖人とみなし、12月28日を「聖なる幼子の日」としているため、カトリックの流れを汲む聖公会も同じようにしているからだと思います。
カトリックや聖公会にはある「聖なる幼子の日」はプロテスタントでは特に定められておりません。人間というものは規定がないと楽な方へ流れます。特にこの聖書の箇所はとても重い聖書の箇所、悲しみに満ちた聖書の箇所です。それもイエスの誕生によって起こった出来事です。「もし、この出来事を語らないので良いならば語りたくない」、「なるべくなら避けたい」箇所だと思います。そしてプロテスタントの教会はそのようにしてきたのではないかと思います。何故なら、プロテスタントの讃美歌の中にはこの箇所に関する曲がほとんどないからです。
教会であまり取り上げたくないからこの讃美歌が歌われない。そして歌われないから讃美歌集に収められないのです。可哀想なことに幼子達はヘロデによって殺され、さらにプロテスタント教会によって無視されているのです。しかし、語られなくなる事こそが同じ悲しみの道を進んでしまう大きな理由でもあります。歴史は伝える事、受け継がれる事で再び命の光を宿し、今を生きる私達の道を照らします。 (牧師:田中伊策)
「聖なる幼子の日」 マタイによる福音書2章17-18節