「他の誰とも違うあなたへ」 マルコ2:13-15

「人のふり見て我がふり直せ」という言葉があります。他の人の行為や動作を見て好ましくないと思ったら、その人を悪く思ったり咎めたりするのではなく(もしくは、その前に)「自分は同じことをしていないだろうか?」と考え、悪かったら改めましょう、という事です。けれどもこれが難しい。「自分の事は棚に上げる」となりやすいものです。だからこそ、こんな「人のふり…」というような諺がある訳です。人の姿に自分を重ねることがなかなか出来ずに他人事になってしまうのが人間なのです。

レビという人がおりました。彼は湖沿いの道で通行税をもらう仕事をしておりました。彼はイエスという人物が時々この湖畔に来るのを知っていました。ある時は漁師に声をかけ弟子とし、ある時は多くの群衆を前に話をしている姿をレビは仕事をしながら見ていました。

その日も彼は一人仕事をしながらイエスが大勢の人に話をしているのを見ておりました。「物好きもいるもんだ」などと思いながら寂しく仕事をしていました。彼の仕事は通行税を取ってイスラエルという国を支配しているローマ帝国の役人に渡す事でした。周りの人は皆、彼を裏切り者と呼びます。だから彼は寂しいのです。

イエスの話が終わったようです。群衆とイエスは湖畔から町の方へ移動します。レビの前を多くの人が通り過ぎます。「みんな俺を通り過ぎて行く。何も変わらない」そう思った時、一人の人と目が合い、彼は自分の目の前で足を止めて言いました、「わたしに従いなさい」。イエスでした。イエスはたった一人でいるレビに目を向け、レビのために立ち止まり、レビに向かって語りかけました。それがレビには嬉しくて、ただ嬉しくてイエスに従いました。

やがてレビはあの群衆が自分と同じ取税人や罪人と呼ばれている人々である事に気づき、「イエスは自分とは関係のない物好きな群衆に向かって話していると思っていたけど、イエスは一人一人に、そしてこの私に語りかけ招いていたのだ」と知りました。(田中伊策牧師)

他の誰とも違うあなたへ マルコによる福音書2章13-15節