「愛する者へと変えられる」マルコ6:53-56

「一行が舟から上がると、すぐに人々はイエスと知って、その地方をくまなく走り回り、どこでもイエスがおられると聞けば、そこへ病人を床に乗せて運び始めた。」(54・55節)

アメリカのプロ野球、メジャーリーグにかつてジャッキー・ロビンソンという選手がおりました。彼は1945年にアメリカのアフリカ系の黒人がプレーする野球のリーグの選手になりましたが、その活躍が目に留まり、メジャーリーグのチームに誘われます。

ところが当時は黒人に対するひどい差別があり、そのため彼はひどい仕打ちを受けます。観客からは暴言と共に卵を投げつけられたり、打席に入ると相手のピッチャーがジャッキーの頭めがけてボールを投げたり、同じチームの選手の中には黒人と一緒のチームでは野球は出来ない、とチームを去ったり。それでも、彼はふてくされずに、また暴力的にならずにプレーを続けます。自分の野球人生だけでなく、後に続く黒人の選手の道を閉ざすことになるからです。

それで彼は、どんなに差別されても、どんなに危険なプレーをされても、紳士的にプレーをし、結果を出します。そんなジャッキーの姿に、少しずつ周りが変わり始めます。監督は「肌が黄色でも黒でも構わない。チームのためになる選手を起用する。従えない奴は去ってくれ!」と言い、チームメイトも観客の心無いヤジや相手チームの危険な行為に対して抗議をしたり、彼を守ったりするようになります。

そして彼のチームは優勝し、ジャッキーも新人王を取ります。その後も彼は活躍し、引退し、亡くなります。やがて彼の背番号42番はメジャーリーグで永久欠番となり、彼がメジャーリーグでデビューした4月15日は「ジャッキーロビンソンデー」となり、その日は選手は全員42番の背番号をつけてプレーをしています。彼の生きざまに触れ、彼に出会った人達が少しずつ変わり、そしてその変化が広がって行ったのです。出会いは人を変えます。

「一行が舟から上がると、すぐに人々はイエスと知って」、この「人々」がイエスを見ただけでイエスをイエスと判別できたということは、この人々が既にイエスと出会っていたということです。その出会いの中で愛され救われた人々は、イエスがしたように悲しむ者、悩む者を探し出します。そしてイエスの元に連れてゆこうとします。イエス様と触れあってその愛を知った彼らは愛する者へと変えられていたのです。出会いは人を変えるのです。(牧師:田中伊策)

「愛する者へと変えられる」マルコによる福音書6章53-56節