「大地に根を張る生き方」列王記上21:1-3

聖書の中には「土地」というのは神様から託されたものなので、売り買いしてはいけない(レビ記25章23-25節など)、大切に子孫に遺すように、というようなことが書かれています。それは土地の事だけではなく神様を信じる心も同じだと思います。あっちこっちに渡り歩くのでなく、神様という大地にしっかり根を張って神様の恵みを受けて生きる信仰の姿そのものです。収穫には時間がかかります。忍耐は必要です。でも、収穫の時を信じて生きるのです。

収穫というのは、決して人が増えるとか、バプテスマを受ける人が多くなるということではありません。新約聖書のガラテヤの信徒への手紙5:22-23には「霊の結ぶ実は愛であり、喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制です。」と書かれています。どれも一人ではできないものです。信仰をもって歩む私たちの中からこの実が育ち、それを無駄にしないで分かち合ってゆく、そういう歩みが大切なのであり、その業を、次の世代に託して行く。そういう信仰が土地を売り買いしてはならないという約束につながるように思います。

力づくで奪おうとする世の中です。権力やお金や暴力や情報で私たちの生活も思想も奪って行こうとします。そんな中で、私たちは「先祖から伝わる嗣業の土地を譲ることなど、主にかけてわたしにはできません」(列王記上21章3節)と言い続ける信仰を持ちたいと思います。私たちはこの嗣業を私たちの子どもたちに、手渡してゆかなくてはならないのです。この教会を、愛する教会の子どもたちに手渡してゆくために私たちはここからまた深く大地に根を張って、結ぶ実を分かち合うその日を待ち望みつつ、そういう歩みをしてゆきたいと思います。

(牧師 田中伊策)

「大地に根を張る生き方」列王記上21章1-3節