「全部受け止めるから降りておいで」 ルカ19:1-10

イエス様の言葉の中に「あなたがたのうちのだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。」(ルカ12:25)というものがあります。今は医療が進んでいますので「寿命」は延ばすことが出来るように思えます。

しかし、この「寿命」という言葉、ギリシア語ではヘリキアと言って「身の丈」「身長」「背」という意味でも使われています。私達はどう頑張っても身の丈は変わりません。背伸びをすれば少しくらい高くなりますが、フラフラしてしまい、長続きしません。寿命も同じなのかもしれません。延ばそうと努力している間にも時間は過ぎて行く。その命を延ばそうと努力している時、本当にあなたは生きているか?そういうことが問われているのかもしれません。

ザアカイは「背が低かった」(3節)。ここで使われている「背」もヘリキアです。それがコンプレックスだったのか、彼はお金儲けに精を出します。税金を取る仕事をしていましたが、多く取り上げて懐に入れていたようです。そうやって一生懸命に背伸びをしたのです。

さて、彼の町、エリコにイエス様が来たという声を聞いたザアカイはどうしてもその姿を見たくなり、駆けつけます。もしかしたら背伸びした暮らしに疲れていたのかもしれません。しかし、イエス様の周りには人だかり。背の低いザアカイには見えません。そこで彼は先回りして木に登ります。するとイエス様はその木の下に来て、「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、あなたの家に泊まりたい」と言われました。

ザアカイには、その言葉が、木登りからではなく、背伸びした人生から降りておいで、と聞こえたのではないでしょうか。そうでなくても木登りは究極の背伸びです。「背伸びしないと心配かもしれないけど、私が全部受け止めるから降りておいで。あなたの身の丈で生きなさい。私はあなたと共にいるから。」イエス様は私達にもそう語りかけておられます。 (牧師)

「全部受け止めるから降りておいで」 ルカによる福音書19章1-10節