「もう一人じゃない」 ルカ19:1-19

ザアカイは多くの物を持っていました。それは彼が苦労して稼いだものです。彼の仕事は税金取りでした。ところが、彼が取り立てた税金は国の中で教育や福祉、公共事業として役立てられるものではなく、全部イスラエルを支配しているローマ帝国に流れてしまうものであったので、ザアカイは周りから「裏切り者!」と呼ばれていました。誰だって苦労の見返りは欲しいし、そうでないと釣り合いません。だから「裏切り者!」と罵られる言葉に釣り合うだけのお金を人々から巻き上げました。水増しして税金を取っていたのです。何かを握ってしまった手ではもう別の何かを手に入れる事は出来ません。彼は一生懸命にお金を握りしめていました。だから、彼には友達はいません。

そんなある日、「イエス様がこの町においでになったってよ!」という言葉を耳にします。イエス様は病人や差別された人々のところに行って慰められた方でした。そしてそんなイエス様にザアカイは会いたい、と思いました。お金も、綺麗な服も、大きな家も持っていたザアカイでしたが孤独だったからです。

彼はイエス様の元に向かいました。でも、彼は人よりも背が低かったために群衆の真ん中にいるイエス様を見ることが出来ません。それで先回りして木に登って待ちかまえます。するとイエス様はやって来て木の上のザアカイを見上げて「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい」と言われました。木に登る時にはしっかりと木を掴み、枝を握らなくては落ちてしまいます。イエス様は「ここに私がいるから降りて来て、その手を開きなさい。あなたはもう一人じゃない」と言われるのです。そしてザアカイはイエス様を家に迎えます。ザアカイはその手を開いたのです。 (牧師:田中伊策)

もう一人じゃない ルカによる福音書19章1-10節